視点を動かしたり、キャンバスを動かしたり、対象を動かしたりしない。

デッサンに重要なのは、「唯一の視点から観察し、動いたり動かしたりしてはならない」ということです。
たとえば描いている途中、よく見ようとして顔を近づけたり、キャンバスの向きを変えたりしてはいけません。
斜めの人物を描くからといって、自分の頭を傾けてもいけません。
繰り返しますが、「観察すること」がデッサンの肝要な部分であり、「描きやすいように調整すること」をしてはいけないのです。

デッサンに慣れていない人は、「えっ、そんなの描きづらいよ!」と感じるでしょう。
そのとおりです。
でも「描くこと」がデッサンの主題ではありません。
「観察すること」が大切なのです。

デッサンをもとに実際の作品を仕上げるときは、どんな扱い方をしてもかまいません。

漫画家が原稿をどうやって描いているかご存知ですか?
鉛筆やシャーペンで薄く下書きをして、ペンを使って清書していきます。
漫画家のペンはボールペンとは違い、万年筆のように持つ角度や動かす向きが決められています。
ペンの性質に逆らうと線を引くことができないばかりか、用紙を破ってしまうことにもなります。
ここからがデッサンとは違ってきます。
ペンは動かす向きに制約があるため、必要に応じて原稿用紙の向きを変えることが求められます。
デッサンは向きを変えてはいけません。
それは、デッサンが物を「観察する」のに対して、ペンはそれをもとに「描く」ものだからです。

デッサン

頭を動かさないように観察し、大まかなアタリをつけていきます。

尻や脚のラインなど、縦に線を引くのに手を「動かしにくいから」といって横向きにしてはいけません。
斜めに線を引く場合も、その「斜めの角度」を見極めて、それをそのまま描くようにします。

「自分の描きやすい向き」に傾けてはいけません。観察にならなくなってしまいます。

デッサン

全体の形が出来上がるまでは、顔を近づけたり、写真を拡大したりしないようにします。

デッサン

デッサンは特に色を塗る必要はありません。

デッサン

このように基本は単色で、陰影を濃淡、あるいは線の密度によって表現するだけでいいのです。

デッサン

単色で陰影を観察しておけば、色を塗るときの参考になります。

実はデッサンそのものは、「クオリティ」という観点では決して高いものではありません。
漫画家が原稿にペン入れをするのにデッサンと同じ手段を使ったら、描けません。
しかし、漫画を描くための基礎になっているのは間違いなくデッサンです。
十分に観察する能力があるからこそ、感情豊かなキャラクターや、人物がどこにいるのかをハッキリ示すことや、
主人公と脇役の顔をしっかりと描き分けることができるようになります。

(゚∀゚)カエル!