上達に近道はない

早く楽に上達できたらどんなにいいか…と思ったことのある人はいるでしょうか。
上達の近道を求めて書店で教本を探したり、ネットで調べたりした人は多いはずです。

評価の高い教本も使い方を誤ると上達の妨げとなる。

「人物画」に限っても数多くの教本が発行されており、それぞれに対象者や趣向、難易度などの違いがあります。
書店でさまざまな本を手に取って読み、そのいくつかを実際に購入した人も多いことでしょう。
インターネット上の評価(レビュー)を参考にして手に入れた人もいるはずです。

どのような教本を読んでも、使い方を誤れば上達どころか挫折の原因になってしまうことがあります。
買っただけで満足し、一般的な本と同じように棚にしまわれている。
教本を読むことは読んでも、その内容の中で「簡単そうなもの」だけを選んで実践する。
読むだけで実践せず、「こんなもの役に立たない。買って損した」と酷評する。

教本そのものが絵を上達させるわけではない。

当たり前のことですが、どんなに優れた教本を買っても、ただ読んだだけでは何の意味もありません。
中には「この描き方(アタリのつけ方や補助線の働き)を知りたかったんだ!」という人もいますが、
それのみを学習すると大きな失敗を犯しやすくなります。

「描き方」を過信しないこと。

顔の描き方、目の描き方、手の描き方、体の描き方、など、いろいろな「描き方」を求める人は多いものです。
「上手く描けないのは描き方を知らないからだ」と考えていることも多いです。

「人物」を描こうと思うとき、本当に参考になるのは教本の絵柄ではなく、実際の「人物」であるはずです。
その実際の人物をまったく見ようともせずに、教本を信用して絵を描いてしまうようでは失敗します。
「教本よりも、自分が実際に描きたいと思う絵を模写したほうがいい」というのは、実は正しいのです。

「でもその模写のやり方がわからないのだから、教本を信じて描いているんだ」という向上心がある人はよいでしょう。
実物を模写するにせよ教本に習うにせよ、実際に鉛筆を持って描いてみることが大切です。

近道は結果的に遠回りになることが多い。

きちんと「見て描く」習慣が身につかないうちに「オリジナル」の絵柄を確立させてしまうと、
自分の絵のどこがおかしくてどこが不十分かが判断できなくなり、そのレベルから上達することが難しくなります。
「自分では満足してるけど、ほかの絵と比べると下手だと思う」「でもどうすれば改善するのかわからない」。
観察力がまだ不十分な段階で自分の絵を確立させると、その後の修正や調整はかえって困難になります。

「アタリ」を過信することの弊害。

「顔の描き方」として円ないし楕円に十字線を入れることがありますが、完全にそのやり方になじんでしまうと、
実在の人物の似顔絵をデッサンするときに問題となる場合があります。
アタリはあくまで「アタリ」であって実際に描こうとしている対象を完全に反映した形ではないから、
あまり過信しすぎるとデッサンが狂いやすく、見たままをきちんと描けなくなってしまいます。

なまじ自己流で絵を描けることよりも、基本である「正確なデッサン」から習得したほうが結果的に成功しやすいといわれるのは、
絵の本質が「よく見て描くこと」であるからであり、「想像」や「工夫」は二の次でよいからなのです。

まだ描けないうちから手抜きを覚えるな!!

「こんな絵に○時間もかかるなんて遅すぎ」「下書きは数分で済ませるべき」などと所要時間を気にする人は多いです。
「このくらいなら5分程度で描かないと話にならない」といわれ、「5分程度」という時間ばかりクローズアップされ、
きちんと描けないうちから「5分程度」で「完成」とみなしてしまう人も少なくありません。

実際に短い時間で絵を描き上げる人もいますが、それは十分な実力のある人だからできるのです。
時間をかけてもきちんと描き上げられない人が、無理に短時間で描けという話ではないのです!!

自分がまだ実力不足で練習が必要だと思うのなら、描く早さなど気にしないで、じっくりと時間をかけて取り組んでください。

(゚∀゚)カエル!