選り好みは決して自分のためにならない。

「自分の好きなものや得意なものを描いていればいい」と思っている人がとても多いです。
たしかに「自分の得意なもの」を伸ばすアプローチは勉強でも仕事でも重要なことです。
しかし絵を描く業界はそれほど甘くはありません。

あなたはおそらく、自分の好きな漫画の作者やゲームのキャラクターデザイナーなどに憧れて
「自分の作品が世の中に出回る」とか「自分の好きなことをして生活していける」ということを意識していると思います

それで熱心に自分だけのオリジナルキャラクターを考えたり、詳細な設定やプロフィールを作成したり、
ゲームのシステムを調べたり、デジタルソフトを購入したりその操作法を覚えたりもしていることでしょう。

……

さて、そうして自分のキャラクターやプロフィールが完成し、ゲームの動きやソフトの使い方なども覚えたとします。
どうですか?
もうプロとして活躍していけると思いますか?
期待や自信を持てますか?
たぶん難しい、いや、無理のように感じるでしょう。

百歩ゆずってゲーム会社に就職したとします。
すぐにあなたのデザインしたキャラクターが採用されると思いますか?
自分のキャラクターだけを描く「仕事」を与えられると思いますか?
そんなおいしい話があるはずがありません。
もし新入社員であるあなたにそんな特権が与えられるとしたら、すでに会社にいた先輩たちはどうなるのでしょうか?
あなたが先輩の立場になり、後輩に同様の特権が与えられたとしたら?

現実は、自分の好きなことや得意なことをアピールするだけでは生きていけないのです。

どれほど高い能力──これには「デッサン」も含まれますが──を持っていても、
それだけで正社員としてやっていけるほど甘い世界ではないのです。

「自分のキャラ以外は描きません」「自分のやりたいことをやらせてくれないなら仕事しません」。
即刻、クビになるでしょう。

……

「絵を描く」仕事につく以上、どのような「絵」を描くかはあなたの都合だけで決めることはできません。
美少女の顔が得意といっても、キモオタや老人、犬や猫などを描くことにもなるはずです。
そんなときに「動物は苦手」「車なんて描けない」「パースはちょっと」などと言っていられるでしょうか?
どのような絵でも描けることが一番重要なのです。

選り好みをしてはいけないのです。

………

「デッサン」というと無機質な石膏像や、球体や三角柱などの「単純な造形を描く退屈な作業」と思われるかもしれませんが、
目の前に置かれた物体を観察し、正確に描写する」という重要な能力を養うために行われるので、
決してサボっていい授業ではないのです。

「描きたくないものは描かない」という時点でプロの素質はありません。
単なる「趣味」にとどまるか、その趣味さえも弱いものになるでしょう。
「絵を描きたい」のに「描きたくない」といっているのですから。

もし、ここで私が述べていることを間違っているとか、「デッサンは不要」「絵が描けなくても仕事はある」とか、
「参考書を読んだり専門校へ通ったりすればいい」とか、「コツさえ覚えれば簡単」とか、
「自分の才能を求めているところは必ずある」などと考えているとすれば、あなたはよくある三行広告に飲み込まれています。

特に専門学校の認可を受けていない、いわゆる「無認可校」がそういう誇大広告を打っていることがあり、
ことさら「自分の好きなことを仕事に!」と強調し、自分の実力以上の活躍の場をちらつかせ、
生徒を集めているスクールが世の中にたくさんあるのです。

「仕事のため」といってその仕事を「選り好み」してはいけません。
その第一歩である「デッサン」を無視して道具やソフトウェアに手をつけても、たちまちスランプに陥ります。

(゚∀゚)カエル!