パソコンやグラフィックソフトはもちろん、ペンタブレットやスキャナーなどの道具は日々進化し、
より高速に、より高性能に、より高機能に、そしてより便利になってきています。
絵を描くのは、あなたです。
絵を描くのに使う道具は、あなたではなく、製造メーカーが開発したものです。
デジタルのソフトもハードも、各メーカーは新製品の開発に余念がなく、
より快適でより性能の高い製品をいち早く発表し、顧客を獲得、また維持しようとしています。
あなたは絵描きでもあれば、絵を描くのに使っている道具の利用者、つまりお客さんでもあるわけです。
これは特に意識したことのない人も多いでしょう。
しかし道具を実際に扱っている以上、「新製品」が出たら気にせずにはいられないのではないでしょうか?
ここに危険な落とし穴があります。
実にかなり多くの人が、自分で絵を描こうと思って購入したソフトやハードをあまり使うことがなく、
その性能や機能などを調べたり、他の製品と比較したり、ほかの人と意見を交換したりと、
本来の目的とはずいぶん異なる扱い方をしているのです。
やがて「ほとんど使っていない」のにアップグレードや買い替えを考え始めるようになり、
絵を描くのではなく、ただ所有欲を満たすための道具になってしまうことさえあります。
これが、デジタルで絵を描こうとする人が最初に陥ることの多い罠です。
デジタルはアナログに比べて「便利」な部分が多く、自分で絵を描いているという感覚や期待とずれていることがあり、
しだいに魅力を感じなくなり、「宝の持ち腐れ」に終わってしまうことも少なくありません。
いざペンタブレットに向かっても、それで描かれる絵が期待外れになるのは
「ペンタブレットのせい」だと決めつけてしまうのです。
ある人はこう言います。
「ペンタブレットは、ほら、手元と画面が別々になってるから上手く描けないのは当然だよ」
「もっとお金をためて液晶ペンタブレットを買えば、思い通りに描けるんだけどなあ~」
「これは道具の限界だね」
………
………
そういう人が液晶ペンタブレットを買っても、決して「思い通り」に描くことはできないでしょう!!
現在、販売されているペンタブレットは十分すぎるほど高性能で、すでに相当の進化を遂げているものなのです。
それが手元にあるというのに描けないのは、単に道具に慣れていないからです。
それ以前に、デッサンをまともにできない人がいくら高性能な道具を手にしたところで、
まともな絵を描き出すことなどできるはずがありません。
「画力」のほとんどいらないトレスさえまともに描けないでしょう。
絵は道具に描いてもらうのではありません。
あなたの手で描くということを認識してください。
自分の手で描こうとしないから、絵の魅力を失ってしまうのです。
既存の絵画や写真を切り抜いたり貼り合わせたり、
色調やレイアウトを変更したり、
変形させたり文字を追加したりするのが楽しいことですか?
もちろん、それが専門の人もいるのが現実です。
しかし「絵を描く」行為とはあまりにも違います。
道具の機能にただ頼っているだけだから、魅力を感じなくなるのです。
ソフトの使い方を完璧にマスターしても、自分の絵ひとつ描けない人は大勢います。
ソフトが描いてくれるのではありません。
あなたの手が描くのです。