「もぉ~どうしたぁ? それがお前の限界かぁ?」



冬の寒空のもと、校庭に雄牛のような力強い男の声が響き渡る。

高校の体育教師、牛岡の声である。



牛岡「ピピーーーッ! ちょっと待った! まず先生がお前たちに話をする」

牛岡の笛で体育の授業が中断され、生徒たちの動きが止められた。


牛岡「いいか、みんな。今から先生が大切な話をする!」
女子生徒「先生、トイレ行ってきていいですか?」
牛岡「行ってこい」
女子生徒「……ちょっと、時間、かかりますけど…」
牛岡「かまわん、行ってこい。ここで漏らされたらかなわんからな」
生徒たち「ププーッ ゲラゲラ…」
牛岡「静かに。みんな、心して聞くように」

牛岡「先生の名前は何だ? そう、牛岡だ。牛に岡と書いて牛岡だ。
 ちなみに先生の実家は酪農家で、小さいころは本物の牛と毎日たわむれていたものさ」
生徒たち「プーッ クスクス…」
牛岡「そう、俺は牛なんだ! 口ぐせだってモォ~だ。ほら、わかるだろ?」
生徒たち「ゲラゲラゲラゲラ…」

牛岡「それで俺は小学校のころからずっと、牛牛牛牛っていじめを受けてきたんだ」
生徒たち「……………」
牛岡「おい。俺の腹を見てくれ、こいつをどう思う?」
男子生徒「すごく……太ましいです……」
牛岡「な? わかるだろ? 俺は小さいころからこんな体形だったんだ」
生徒たち「ゲラゲラゲラゲラゲラゲラ…」
牛岡「それで足が遅くて、走ってもよくコケるし、野球をすればキャッチャーをやらされるわ、
 授業にはなかった相撲をやれと言われるわ、牛乳を一気飲みさせられて吐いたわ、
 もう、先生はいっそ寝込んで牛になろうと思ったくらいだぞ。いや、本気で」
生徒たち「ギャアッハッハッハッハ…」

牛岡「あのときの俺に比べれば、お前たちは恵まれている!」
生徒たち「………………」
牛岡「この俺がお前たちを教えているからだ!」
生徒たち「………………」


女子生徒がトイレから戻ってきた。


女子生徒「先生、トイレに紙がありませんでした」
牛岡「手で拭いたのか?」
生徒たち「プギャーッハッヒャッヒョ…」
女子生徒「い…いいえ……あの…もう…あっ………」











女子生徒は次の日、学校を休んだ。