スピード違反の明海専用車はわずか3分で自宅に到着し、音速のエレベーターで学用品の置いてある77階まで駆け上がった。
うえええ…ものすごい重力だわ…
そうでございましょう…。
加速度は重力と等価でございますので……。
マビも重たかったけど、まさかエレベーターでも体験することになるとはね…。ちょっと休憩してから行くわ。
では、マビノギのサーバーを強化するよう、私から進言してまいりましょう。
ん。頼んだわよ。
明海はふと、部屋にあすさんがいないことに気づいた。
明海「ああああああああああああああああああああああああああ」
執事「ど、どうなさいました!?」
明海「あすさんが!!!!!!!!!!!!!!!!!」
執事「は…」
明海「ネカフェ!!!!!」
執事「もしや……お忘れになられたのですか…」
明海「どこかで落としたとか!?!?」普段は白い粉あるいは錠剤の形態になっているあすさんは、あまりにもコンパクトなために紛失しやすいのである。
明海「ったく!!インプみたいなんだから!!」
執事「私、探してまいります」
明海「ああ、薬局で買ってくればいいから!」
執事「ですが…アスピリンの需要はイブプロフェンに押されて…」
明海「いいから買ってきなさい!」明海は声を荒らげて登校の準備に取りかかる。
執事「ああ…どうすればいいものか…お嬢さまはアセチルサリチル酸をaspirinさまであると思い込んでおられる…。あのような物質、いえ、お方の代わりになるものなどないというのに…」
明海の母「何かあったの?」
執事「ああ、奥さま、実はお嬢さまが………」
明海の母「それで、どこで紛失したか覚えてないと?」
執事「ええ…おそらくネットカフェを出る際に落としたと思われるのですが…」
明海の母「では、大至急そこを探すわよ」
執事「はい、ただちに」
明海の母「……酔っ払って落とした、なんてことはないわよね? スピードの出しすぎとか」
執事「は、はい! も、もちろんでございます…」
鋭い明海の母の指摘を受けて動揺する執事は、安全運転でネットカフェへ急行した。
明海の母「鎮痛剤なんかに代えられるものじゃないわ。鎮痛剤なんかに…」
執事「ああ…ネットカフェでいったい何をなさっていたのか…」
明海の母「急に学校へ行く気になったなんて、かえって不自然だわ」
執事「学校の環境が急によくなったとは思えません…」
明海の母「あの子、何か幻覚でも見たのかしら……」
執事「………申し上げにくいのですが、実は、その………」
明海の母「マジックマッシュルームですって!?」
執事「はい……。ゲームのお話かもしれませんが、何度もマジックマッシュルームの話題で盛り上がっておられました……」
明海の母「それはマビノギでしょう?」
執事「そうでございます」
明海の母「心配ないわ。どうせアイバのことよ」
明海の母はいつも娘からマビノギの話を聞かされていたのである。
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