マナビノギ

マビノギハァンタジーライフ

明海「あすさん、普通って何なの?」



明海はいきなり難題を提示した。
普通が何であるかという質問など、基準をどこに置くかで変わってしまうからだ。
そのため、あすさんも回答に詰まることになる。


あすさん「その質問に答えられる人はいないよ…」
明海「あたしは普通なの?」
あすさん「明海が普通だとすると、私は普通ではなくなる」
明海「あすさんが普通だとすると?」
あすさん「明海は普通ではなくなる」
明海「どっちが普通なの?」
あすさん「どっちも普通だよ。でも、どっちも普通ではない」
明海「……異常ってこと?」
あすさん「異常であることが普通なのだ」
明海「異常じゃない人が普通じゃないってこと……?」
あすさん「そんな人は存在しない。みんな、どこかが普通ではないからだ」
明海「普通ではないことがいいことなの?」
あすさん「いいか悪いかも決められないよ。あるときにはよくて、あるときには悪くなるかもしれないから」
明海「決められない……」
あすさん「普通かどうかを考えたって誰も得をしない。一人一人を考えることに意味があるのではないかな」
明海「……そっか……」
あすさん「普通の役者というのはどんなものかと聞かれても、答えようがないだろう?」
明海「たしかに…」
あすさん「普通の役者は役者なのかどうかも怪しい」
明海「役者ではないかもしれない……」

あすさん「明海が普通だと思っているのは、どんな人なんだ?」
明海「そう言われてみると……まったくわからない……」
あすさん「明海が自分自身を普通だと思うことができれば、それでいいのかね?」
明海「………思っても意味がない気がする……」
あすさん「普通と思うことに意味などない。ただ、似た人が集まることで強められる場合がある」
明海「……それであたしは学校に通っているわけか……」
あすさん「目的に合った学校に、同じ目的を持つ人が通う。理科室で楽器を演奏する人などいないだろう」
明海「空気が読めてないね……それこそ普通じゃない……」
あすさん「そういうことだ」


難しい質問だったが、どうにか納得のいく答えを与えることができたようである。


明海「やっぱりあすさんに来てもらって正解だったな~」
あすさん「いや、まだわからないよ」
明海「でも今は間違いなくいいんだよ」
あすさん「そうそう。今は、だ」
明海「それはあすさんも納得してくれる?」
あすさん「異議なし」
明海「よ~し! じゃあ今日の授業はここまでね!」
あすさん「はーい」
明海「ぶはっ! また立場が入れ替わってる!」
あすさん「時にはボケてみせるのも先生の仕事だ」
明海「aspirinさん、すごいです!最高です!」



明海の一連の反応は演技なのか──


十分な理解力のあることをうかがわせる明海であるが、それは演技力の高さを示すものなのか、
それとも、あすさんの説明がたまたま理解しやすかっただけなのかは、まだわからない…。


執事「明海さま、お風呂のお時間でございます」
明海「え? もう?」
執事「お勉強に夢中になられているようで…」
あすさん「…い…いつの間に現れた…」

気配を感じさせずに二人の前に現れた執事。
紳士的なスーツを身にまとった初老の男性で、明海が生まれたときから面倒を見ているため、
まるで孫娘に接するかのような口調と態度があり、優しい雰囲気が漂っている。

あすさん「お風呂のあとは、お食事でもあるんですか?」
執事「はい。ロフリオスのような偏った食事ではなく、素晴らしいメニューからお選びいただけます」
あすさん「それは楽しみだ」
明海「あすさんあすさん! あすさんもお風呂入るよ!」
あすさん「へ?」
明海「2日間も入ってないでしょ」
あすさん「あぁ…そうだった…」
明海「あたしが洗ってあげるから、一緒に来て!」
あすさん「………え?」
執事「aspirinさまもご一緒にどうぞ。お二人の親睦を深めるためでもあります」
あすさん「どこまでが演技なんだね?」
明海「演技? 毎日お風呂に入るのは常識でしょっ!」
執事「さ、どうぞこちらへ。お着替えも用意しております」
あすさん「執事も入ってくるのかね?」
執事「とんでもない……」
明海「あすさんってお風呂の時間が長いよね。何をしてるのか気になる~」
あすさん「私はただ動作が遅いだけだ……」
明海「じゃあスローなあすさんを見られるのね」
あすさん「見ないで~~~マジで~~~」


すっかり明海と執事のペースに乗せられているあすさんである。

浴場へと連れていかれた。

家庭教師というのは、いわゆる学校の先生とは異なり、免許や資格を必要とするものではない。
そのため学校の先生以上に実力や人柄、生徒との相性が問われる分野であるから、
あすさんの出る幕などほとんどないといっても過言ではないのであった。


明海「あすさんは何を教えてくれるの?」
あすさん「何を教える……うーん……」
明海「何を勉強したらいいのかわからないね」
あすさん「ちょっと教科書を見せてもらってもいいかな?」
明海「どぞ~」

明海は席を立ち、教科書のあるところへ歩いていった。
あすさんはあわてて呼び止める。

あすさん「待て待て、まさか…教科書が遠くにあるのか…」
明海「うん~」
あすさん「じゃあ…そこでやろう…」
明海「はーい」

レストランから2分ほど歩いていくと、明海の学習机らしきものが置かれているところにたどり着いた。

あすさん「こんなに部屋を広く作って…大変だろう…」
明海「どうってことないよ。慣れちゃえば!」
あすさん「いつになったら慣れるかな…」
明海「気にしない気にしない! はい、これが教科書の全部だよ」
あすさん「どれどれ……」

あすさんが適当な教科書を手に取り、パラパラとページをめくってみる。

あすさん「……な、なんだこれは……」
明海「アッー!」

教科書の至るところにカラフルなペンで落書きがされている。しかも妙に見覚えのある絵だ。
人形っぽい目、微笑む口、ピンクのローブ……
一目でaspirinを描いたものであることがわかってしまった。

あすさん「どんだけaspirinラヴなんですか……」
明海「いや~! 落書きはどうでもいいの!」
あすさん「授業中も頭はマビのことでいっぱいか……」
明海「もうっ! 仕方ないじゃない~~」
あすさん「じゃあ…ノートのほうも…やっぱり……」
明海「これは見せないっ!」


明海との授業は難航した。
学習どころではない話題が次々と飛び出してくるからである。


あすさん「はあ……授業を始めるつもりの時間から、もう1時間が過ぎてしまった…」
明海「あっという間だね。あすさんとしゃべるの楽しいから」
あすさん「いやぁ…でも…これじゃだめだ……」
明海「楽しいから、いいってことにしようよ~」
あすさん「明海のお母さんがなんて言うか……」
明海「お母さんも、別にあすさんに期待なんかしてないと思うよ~?」
あすさん「ぶはっ!」
明海「あぁっ! あたしは期待してるからね!」
あすさん「お母さんも、って…」
明海「あーっ! 違うの違うの! 一般論として、だよ。あたしは期待してるよ!」
あすさん「まぁ、いいか……期待されても困るし……」

明海「あすさんって体育はだめなんだっけ?」
あすさん「だめすぎる」
明海「運動が苦手?」
あすさん「正確に言うと、運動そのものが苦手なのではなく、他の人と協力したり、競い合ったりするのが苦手」
明海「たとえば?」
あすさん「うーん、逆に考えよう。一人で体を動かすだけなら、別に苦手なことはないんだ」
明海「ほう!」
あすさん「試合や競技という概念がある運動は、基本的にだめと思っていい。野球もサッカーも、大縄跳びも、リレーも…」
明海「試合のないスポーツって…なんだろう……」
あすさん「球技などはほとんどアウトだ。一人だけでは成立しえない運動だからな。一対一でも相手がいるのだから、アウトだ」
明海「体操とかはどうなの?」
あすさん「それは悪くない」
明海「おお!!」
あすさん「でも体操の授業なんて、無視されるくらいの内容だった」
明海「水泳は?」
あすさん「ほとんどだめだ。全身の連携が上手くできず、息継ぎの要領が身につけられない」
明海「ぜんぜん泳げない?」
あすさん「頭を水面から出していなければ泳げない。犬かきだな…」
明海「そっかぁ…無理は言えないね。泳げない人にとっての水泳は、命にかかわるもんね……」
あすさん「明海はよく理解しているな……私が教える必要もないくらいに……」
明海「よく理解できるよ。理解しようとしてるんだから…」
あすさん「……まいったな……」
明海「なにが?」
あすさん「どっちが先生なのかわからなくなってきた」
明海「うははは! そうだね!」


明海の鋭い洞察に驚かされるあすさん。
これほどの理解力を持っていながら、どうして学校へ行きづらいと感じるようになったのか。

それ以上に疑問なのは、億万長者なのになぜ役者になる夢を抱いているのかである。
わざわざリスクの大きな将来を目指すことが本当に必要なのか……。


ここへ来てあすさんは、明海に釣られているのではないかと思い始めた。


あすさん「……そうだ!」
明海「なになに?」
あすさん「ちょっと気が早いけど、進路相談をしよう」
明海「進路相談……」
あすさん「生徒の進路について考えることも先生の仕事だからな」
明海「おお~! かっこいい!」

役者志望の明海を徹底的に追及することになった。

あすさん「役者になりたいと言っていたね?」
明海「うん」
あすさん「どうして役者になりたいのかな?」
明海「……あたしもお父さんみたいに目立つ存在になって、人の役に立ちたいと思ったから……」
あすさん「お父さんにはまだお会いしていないけど、その偉業は全世界を震撼させるほどの影響を及ぼしている」
明海「お父さんの会社が、日本のGDPの650%を占めているんだって」
あすさん「信じられない数値だな。世界のほぼ半分に匹敵するんだぞ…一つの会社が…何かの間違いなんじゃないのか…」
明海「間違いだとしたら、あたしの身の回りにあるものは全部うそってこと。あすさんは夢か幻覚を見ていることになるよ」
あすさん「………お父さんを超える存在になりたいと思うようになったわけだね?」
明海「うん。だってあたしにはお父さんみたいな錬金術は使えないから……」
あすさん「役者としてテレビや舞台の上に立てば、目立ったことになるわけか……」
明海「お母さんはあたしに、普通に進学して、普通に就職して、普通に結婚でもすればいいって言うけど、
 お母さんはお父さんを好きではないみたいで……結婚という部分が、どうしても信用できないの」
あすさん「な…なんてことだ………」
明海「……そもそも普通って何なのか……お母さんはあたしを普通と言うけれど……じゃあ普通じゃないものって何なのか……」
あすさん「なるほど……」
明海「だから…ね……あたし、学校でも友達ができなくて……」
あすさん「まるで次元が違うように思われているね……」
明海「……何も悪いことしてないのに……」
あすさん「大変だね…」

涙を浮かべながら話す明海。



これは演技なのか?



役者志望の人間なら、このくらいのパフォーマンスはあるかもしれないと、あすさんの緊張はいっそう高まっていった。

月謝300万円という破格の家庭教師。
あすさんによる初めての授業が行われることになった。
広すぎて落ち着けない明海の部屋での個人授業は、どんな内容で執り行われるのだろうか。


明海「センセー、質問でっす!」
あすさん「い…いきなり質問? 何でしょう?」
明海「センセーのフルネームって何ですか?」
あすさん「アセチルサリチル酸……」
明海「ほんとに~?」
あすさん「もともとバイエルアスピリンは登録商標だったのだが、現在ではアスピリンは普通名詞になっている」
明海「アセチルサリチル酸って?」
あすさん「ステロイドではない抗炎症薬の一つで、痛みや発熱や炎症の治療に用いられる代表的な医薬品だ」
明海「どこにあるの?」
あすさん「バファリンは知ってるかな?」
明海「半分がやさしさでできている……」
あすさん「そう。それに含まれている」
明海「半分?」
あすさん「いや、質量比でいったら半分以上がアスピリンだ」
明海「半分以上があすさんでできている、ってこと?」
あすさん「そう思っていいかもしれない」

明海「なんであすさんはaspirinって名前なの?」
あすさん「うーむ…本当のところは自分でもよくわからないんだ…」
明海「適当につけたとか?」
あすさん「実はマビノギに最初に作成したキャラクターはaspergerという名前で、スキルを適当に上げて失敗してしまった」
明海「ほっほー」
あすさん「次にalbuminという名前のキャラクターを作ったものの、これもメインにはならなかった」
明海「へぇー」
あすさん「次にaluminaという名前のキャラクターを作り、2回ほど転生して育てたのだが、これもメインにはならなかった」
明海「えー!?何がいけなかったの?」
あすさん「まぁ続きを聞いてくれ。私は最初、複数のキャラで役割を分担していこうと考えていた。
 最初のaspergerはギルドマスター、2番目のalbuminは弓、3番目のaluminaは近接…という具合にね」
明海「ふむふむ」
あすさん「それで4番目となるaspirinを作成し、ハーブ豚を購入して薬草学と調合を担当しようとしたんだ」
明海「ふむふむふむ」
あすさん「当時も今もあまり変わらないが、弓や近接の攻撃スキルよりも、生産スキルのほうが苦労するだろう?
 albuminのレンジアタックやaluminaのウィンドミルよりも、aspirinの調合のほうがはるかに大変だったんだ。
 桁違いに手間がかかって、もっとも使用時間の長いキャラになったため、結果的にメインになってしまったわけなんだ」
明海「なるほど!!やっぱり育てる手間のかかる子ほど愛着が沸くもんね!」
あすさん「薬草学も調合もIntとDexが上昇する。魔法と弓に影響する重要なステータスということなので、
 これはもう手間をかけた分だけ強くなると信じて、aspirinをメインにしようと決意するに至った」
明海「そうなんだ~! でも、なんで名前がaspirinなのかという説明にはなってないね」

あすさん「初めのキャラはすべて頭文字がaで統一されている。これは大した問題ではない。
 しかし、アスペルガー、アルブミン、アルミナ、アスピリンの中で、よく知られている単語はアスピリンだ」
明海「たしかに。ほかは知らないなぁ~」
あすさん「ところが、意図的にアスピリンをメインにしたつもりはまったくないんだ。
 たまたま習得したスキルと、ランクアップの手間が特に大きかったキャラがアスピリンだったというだけであって、
 初めからメインになる予定があったわけではないのだよ」
明海「でも、その4つの名前だったら、アスピリンが一番よさそうっていうか、親しみやすそうに聞こえる」
あすさん「そうなんだよ。もし私のキャラが別の名前だったら、おそらく、あすさんではなかっただろう…」
明海「……たしかに! あすさんっていうイメージじゃなくなっていたかも……」
あすさん「だから、たまたまそうだった、としか説明のしようがないんだなぁ…」
明海「aspirinさん、すごいです!最高です!」


あすさんのあまり知られていない真実を聞いた明海は興奮し、しばらくアイバのようになった。


あすさん「さて…自分語りはこのくらいにして、ちゃんと授業を始めるとしよう」
明海「aspirinさん、すごいです!最高です!」

カレーライスとレアチーズケーキという安易な食事で腹を満たしたあすさんは
今度は睡魔に襲われるのかと思いきや、むしろ元気になった。
危なっかしい本能に導かれるままの欲望が目を覚ますわけでもなく、
自分に与えられた課題──明海の家庭教師の役割を果たすためである。


あすさん「さて、満腹になったことだし、そろそろ授業を始めようか」
明海「あ、その前に、ちょっと」
フレイザー「私は見習い調理師…」
あすさん「お?」
フレイザー「んー、やっぱり固くるしいのは駄目だなぁ。いらっしゃい!私はフレイザー。ここで料理を習っているんだ」
明海「紹介するね。これがトレイムスコイデの見習い調理師、フレイザー」
あすさん「…だからロフリオスじゃ……」
明海「アッー!」
フレイザー「女神を救出したって?うわ~すごいね~」
あすさん「…はぁ?」
明海「ゲラッゲラッ! あすさん、あたしと一緒にいるから女神タイトルに変わったみたい」
あすさん「頭上に名前やタイトルが見えるとでも言うのか……」
明海「内部的にあったりしてね」
あすさん「内部情報……」
フレイザー「あ~あ、何? 女神を救出したんじゃなくて、結婚したタイトルの見間違いかな」
明海「な…なに言ってんのよ! もう下がっていいわよ!」
フレイザー「僕かい?僕こそがイメンマハで一番の調理師だよ。まだ、一人前とは言えないけど…」
明海「帰れ! 半人前!」
フレイザー「別の話をするのは、駄目なの?」
明海「お黙り!!!」
あすさん「あーひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ」


あすさんが結婚など夢のまた夢、妄想の妄想に過ぎない。
そもそも明海との年齢差が400年もあるので、まともに付き合うことなど不可能である。


ゴードン「いらっしゃい!お目当はなんだい?」
明海「あ、こっちが料理長のゴードン」
あすさん「ほう」
ゴードン「私はこのレストランの料理長ゴードンだ!」
あすさん「ふむ、気合が入っているな」
ゴードン「女神を救出しただと? ふん、大げさに話すことか! 冒険者たる者、そのくらいの度胸がなくてはな」
明海「まだ何も話してないでしょ? なに言ってんのよ」
ゴードン「私をみて料理しか能がないと言う人が居るが、それくらい一つの事に掛けられない人は一生
 何も成し遂げることができないんだ!」
あすさん「なに言ってるんだ? 料理の腕はグルアスのほうが上じゃないか」
明海「ねー」
ゴードン「フレイザー以外に、弟子を受け入れるつもりはないんだ」
あすさん「弟子入りするつもりもないんだが」
明海「ゲラゲラゲラゲラ……」
ゴードン「お腹が空いてるのか? じゃあ、何でも注文してくれ!」
あすさん「もう食ったよ…」


NPCとは話が通じない……。
彼らは用意されたテキストデータを読み上げるだけの存在である。
血の通った人間ではないのだ。


明海「こっちは、単なるメイドのシェーナ」
シェーナ「トレイムスコイデは、いえ、ロフリオスは、王国最高のレストランですよ!」
あすさん「かみまくりだな」
シェーナ「aspirinさん! レストランは初めてよね? いらっしゃいませ~!」
あすさん「ここのレストランは初めてだ。びっくりドンキーへはよく行ったことがある」
シェーナ「女神を助けたの? aspirinさんが!?うわぁ~、そんなことできる人が本当にいたんだ! すご~い!」
あすさん「………バグってるんじゃないのか?」
シェーナ「あら、今ワタシを口説いているのかな? イヤだわ、フフフ…」
あすさん「ぬるぽ」
シェーナ「ガッ」
あすさん「おい! いま反応しただろ?」
シェーナ「(まんざらでもないようだ…)」
あすさん「うーむ………釣られているのか…私は…」
明海「あはは…もういいかな? みんな下がっていいわよ」

フレイザーとゴードンは厨房へ、シェーナは床の掃除に戻っていった。
彼らはときおり何かをつぶやきながら、単調な作業を繰り返しているようである。


あすさん「さて、邪魔者はいなくなったことだし、授業を始めようか」
明海「待ってました!!!」

明海の新しい家に案内されたあすさん。
家の中を15分も歩く必要があるとは……
明海に引きずられて、ようやく部屋にたどり着いた。


明海「ジャーン! これがあたしの部屋です!」
あすさん「これは………」

部屋というより広場であった。

ウルラのゴーストタウン・イメンマハを模したデザインのようである。
部屋の中央には噴水があり、色とりどりの花に囲まれていた。
おそらく造花である。
部屋の周囲には湖があり、ここには本物の魚が泳いでいるのが見えた。

あすさん「……部屋なのか………」
明海「そうだよ。天井もあるし壁もちゃんとあるでしょ」
あすさん「ここが地上77階の部屋…」
明海「外を見てみる?」
あすさん「どれどれ……」

窓まで行くのに3分はかかる。
恐るべき広さの明海の部屋であった。

あすさん「高い……」
明海「いい眺めでしょ。ここからあすさんの家も見えたらいいのにな~」
あすさん「見えそうなくらい高い……」
明海「どんな家に住んでるのかなぁ」

ふと足元を見ると、

あすさん「うわっ! これはグリーンアロワナじゃないか!」
明海「うん。いろんな魚が泳いでるよ」
あすさん「しかもでかい……」
明海「マビにはいない魚だよね」
あすさん「うちにもいない……」
明海「あすさんちも魚いっぱい飼ってたよね」
あすさん「うちの比じゃない……」
明海「へへへ」

造花だと思っていた花も本物であり、珍しい植物が多数植えられている。
ナオやサキュバスの顔出し看板が置かれていて、演奏会場やレストランまである。

あすさんはこのまま明海の家に住んでもいいのではないかと思うようになった。
自宅よりも広くて快適だし、何の苦労もせずに生活できそうだからである。


あすさん「さ、さて、ここへ来たからには授業を始めないといけないな」
明海「おっおっおっ! あすさんの初授業ハジマル!」

しかし、この広大な部屋のどこで勉強をすればいいのだろうか。

あすさん「いやぁ…部屋が広すぎて落ち着かないな……」
明海「すぐ慣れるよ!」
あすさん「まずは明海の部屋をすみずみまで紹介してもらったほうが……」
明海「えーっ? すみずみまで紹介してたら何日もかかっちゃうよ~」
あすさん「………そうだろうな………」
明海「じゃあじゃあ、あっちで勉強しようよ」
あすさん「……(ぐぅぅぅぅ)」
明海「あらやだ…あすさん…」

あすさんの腹部から盛大に異音が発生した。
丸一日、何も食事をしていないからである。

あすさん「おなかがすいた……」
明海「あぁ、じゃあレストランいこっ!!」
あすさん「そうしよう…」
明海「その名もトレイムスコイデ!」
あすさん「……ロフリオスじゃなかったっけ…」
明海「あっ!!!間違えた~~~~~~」
あすさん「とりあえずそこへ……」
明海「もう少し歩くからね。頑張ってね、あすさん」
あすさん「うう……」


非常に快適だが、この家は唯一、移動だけが不便であるとあすさんは感じた。
しかし毎日、明海はこの部屋を出入りしているのだから、運動不足には縁がないのだろう。
不便だが、健康にはよさそうな生活環境である。


明海「はい、到着!」
あすさん「やっと飯にありつける……」
明海「好きなの注文していいよ」
あすさん「専属のシェフがいるのか」
明海「一人はまだ見習い料理人だけどね~」
あすさん「フレイザー……」

エリンでは無視されそうなNPCや要素をふんだんに盛り込んだ明海の部屋。
あまりのクオリティの高さに、圧倒されそうなあすさんであった。

あすさん「おいおい…メニューが少ないなぁ……」
明海「うん……ちょっとね……ロフリオスを再現しすぎちゃったかなぁ……」
あすさん「私が食べられそうなメニューは……」
明海「レアチーズケーキ、カレーライス……」
あすさん「じゃあ…カレーライスとデザートにレアチーズケーキを……」
明海「ごめんね~…だめなシェフばっかりで…」

食事も不便な家である……。

あすさん「カレーきたーーーーー!」
明海「きたきたきたーーーーーー!」
あすさん「すぐに出てきたってことは、作り置きしてあったのだろうか……」
明海「まさか……」
あすさん「もぐもぐ……」
明海「どう?」
あすさん「うまーーーーーー!」
明海「ほっ」
あすさん「レアチーズケーキももぐもぐ……」
明海「どれどれ……」
あすさん「うん、これもいいね!」
明海「うまーーーーーーー!」

赤黒クマから命がけで逃げ出したあすさんの体はもはやボロボロである。

クマの極太の腕から繰り出される強烈なスマッシュの直撃で受けたダメージと、
常識では考えられない速さで走ったことによる筋肉への負荷は甚大なものであり、
それ以前に女子高生たちとの対応で疲労の極限に達していたあすさんは
丸一日、眠り続けてしまった。


そして、次の日…


明海「あすさん……あたし、頑張って学校いくから……帰ってきたら目を覚ましてね……」

明海は小声であすさんに話しかけ、中身の詰まったカバンを抱えて部屋を出ていった。
あすさんは死んだようにベッドの上に横たわったままで、目を覚ますことはなかった。



正午が過ぎ、3時が過ぎ、しばらくすると…


ピンポーン。


インターホンの音が鳴った。
明海が経験したものと同じである。


ピンポーンピンポーン。


人の気配を感じさせずに鳴り続けるインターホン。


ピンポーン。


この不可解な音であすさんは意識を取り戻した。


あすさん「……ここは……っ! ……いてて……激痛が痛い……」

あすさんが痛みで泣きそうになると、インターホンの音は聞こえなくなった。
それと同時に、自分のいる環境の異変にすぐに気がついた。

その部屋には一切の生活用具がないのである。
窓はあってもカーテンがなく、壁紙はすべて取り去られた形跡があり、照明器具もない。
明海の部屋なら学習机やクローゼットくらいはあるはずなのに、それも見当たらない。


自分が横たわっているベッド以外、何もない部屋なのだ。
ところが床にノートパソコンが置かれていた。

あすさん「この部屋は…いったい……明海はどんな生活をしているんだ……?
 このパソコン……電源が入ったままだ……明海のものだろうか……」

パソコンを見てみると電源が入っており、デスクトップが画面に表示されていることがわかった。
画面中央には「あすさんへ」という名前のファイルが置かれている。

あすさん「これは何だろう………」

あすさんがトラックパッドを操作し、そのファイルをダブルクリックして開くと…

あたしのパソコン勝手に見たら怒るからね(#^ω^)ピキピキ

                          明海

あすさん「ああっ!!しまった…トラップか~~~~~~~!」

ガチャッ

あすさん「ぎゃあっっっ!!」


次の瞬間、背後のドアがガチャッと開いた。


明海「あー! あすさんが復活してる~~~~~~!!」
あすさん「や、やぁ……」
明海「あすさん復活だー! 復活だー!」
あすさん「ふ…復活だぁ~………」
明海「よかった……もう目を覚まさないのかと思った……」


ようやくまともな形で対面することになった明海とあすさんであるが、
初めがあまりにも非常識であったために、しばらく沈黙が続いた。


あすさん「…嬉しいのやら悲しいのやら…といった感じだね……」
明海「う、うん……。にこあ としか思えない……」
あすさん「にこあ……」
明海「このままあすさんが目を覚まさないのかと思うと……」
あすさん「大丈夫だよ……私は見てのとおり…生きている…」
明海「もし…あすさんが帰らぬ人になったら……原因はあたし……」
あすさん「……何度も殺さないで……」
明海「とにかく無事でよかった!」
あすさん「にこっ」

明海「あ、あすさん、あたし、今日は学校に行ってきたんだよ」
あすさん「そうか、それはよかった!」
明海「死んだあすさんの分まで頑張らなきゃ、って思ったの」
あすさん「また殺された~…」
明海「このまま家にいてくれたらいいのにな…」
あすさん「…あぁ…そうだ…帰りのこと…どうしたら…」
明海「帰ってほしくないなぁ~…」
あすさん「そういうわけにはいかないよ…」
明海「どうしたらここに残ってくれる?」
あすさん「ははは…そりゃ、ここで生活していけることが条件だよ」
明海「ふーむ……」


明海は考え込んでしまった。
あすさんにはその様子が冗談なのか本気なのかを判断できなかった。


あすさん「ところで明海、この部屋はいったい……」
明海「ん? あたしの部屋?」
あすさん「人が住んでいるとは思えない部屋なのだが……」
明海「実はこの部屋、というかこの家、取り壊すことになったの」
あすさん「…え?」
明海「この家がもともと相葉家の住んでいた家なんだけど──」
あすさん「ふむふむ」
明海「お父さんが錬金術の事業を一気に拡大させてからは、
 この家とは比べ物にならない巨大な家を建てて、そこに住むようになったの」
あすさん「ふむ。この家はずいぶん古いようだね」
明海「そうなの。耐震基準を満たしていないから、もう住むことはできないんだって」
あすさん「そうか。引越しをするわけか」
明海「うん。でもあすさんには、長年あたしが暮らしていた部屋を見てもらいたくて…」
あすさん「なるほど………」
明海「あすさん、新しい部屋に案内するね」
あすさん「いくお♪ てけてけ! あっつー……いててて……」
明海「大丈夫? 歩けない?」
あすさん「筋肉痛は、じわじわくる……」
明海「あたしにつかまって」
あすさん「申し訳ない……」
明海「いくお♪」
あすさん「てけてけ」


あすさんは明海に体を預けながら階段を下り、玄関を出た。

明海「あすさん……真冬なのに裸足で、しかもサンダルで来るとは思わなかったよ…」
あすさん「これが私の正装なんだ」
明海「aspirinさん、すごいです!最高です!」

路上を歩くこと数分。

あすさん「え……このローズタワーみたいな建物が?」
明海「うん。これがあたしの新居」
あすさん「……何人家族だっけ?」
明海「3人だよ」
あすさん「この建物の一室が、じゃなくて、建物全部で3人暮らしってことか?」
明海「そうだよ」
あすさん「そんなバカな………」
明海「あすさんを入れたら4人だね。ちょっと狭くなるかも…」
あすさん「いや、十分すぎる……」


3人で暮らす家としては桁外れの大きさである。
しかしあすさんは、実際に内部を見るまでは信用できなかった。


明海「この最上階にお母さんがいるから、今から会ってくれる?」
あすさん「最上階って何階だ……」
明海「77階だよ」
あすさん「……………」
明海「大丈夫だって! ちゃんとエレベーターついてるから!」
あすさん「これが本当に家といえるのか……」
明海「あ、あすさんって高いところ苦手?」
あすさん「いや……驚いているだけだ……」


エレベーターで77階へ向かうこと6分。
あすさんは明海の母と初めて会うことになる。


あすさん「77階を3人で割っても、1人あたり25階分のスペースだぞ……どうやって住むんだ…」
明海「そっか~。もうちょっと歩いてね」
あすさん「家の中でこんなに歩くことがあるなんて…」
明海「楽しいでしょ」
あすさん「いいえ、今は疲れるだけです……」
明海「にこっ」

明海「あ、お母さんだ」
あすさん「あ、あ~…えーと…」
明海の母「ようこそいらっしゃいました。明海の母です。どうぞよろしく」
あすさん「あ、どうも……このたび…明海さんの家庭教師…として……」
明海の母「あらあら。あすさん、無理をなさらないで」
あすさん「……といいますと……」
明海の母「無理に体裁を取り繕おうとなさらなくていいんですよ。あすさんは明海にできた初めてのお友達ですもの」
あすさん「は……」
明海「ばれちゃったか~」
明海の母「あすさんのことは明海からよく聞かされています。なんだか、まるで」
明海「お、お母さんっ!」
明海の母「…本当にわがままな娘ですけれど…よろしくお願いしますね」
あすさん「はあ…こちらこそ……」
明海の母「さっそくですが、これを」
あすさん「……?」

あすさんは明海の母から封筒を手渡された。
小さな封筒の中に書類の束がぎっしり詰まっているようであった。

あすさん「……これは?」
明海の母「ここまで来てくださったお礼と、気持ちです」
あすさん「……開けてもいいですか?」
明海の母「どうぞ」

あすさんが封筒を開けると、大量の一万円札が入っていた。

あすさん「ちょ…ちょっと……待ってください……これは……」
明海の母「今月分のお給料、300万円です」
あすさん「さ、さんびゃく……」
明海の母「それでどうか娘をお願いします」
あすさん「待ってください……ここへ来るまでの交通費の100倍じゃないですか……」
明海の母「足りないようでしたら……」
あすさん「い、いいえ! 逆に多すぎるのでは……いくらなんでも……」
明海の母「もしあすさんがお望みになるのでしたら、こちらにお泊りいただいてもかまいません」
あすさん「あの…っ! 本当のことを言いますと…私は家庭教師などではなくて……」
明海の母「いえいえ。身分など関係ないのです。わたくしも明海も、あすさんご自身を高く評価しています」
明海「そうだよ~、あすさん!」
明海の母「これからも娘をよろしくお願いします」
あすさん「……………」
明海「あすさん、そんなもんなんだよ。家庭教師に資格とか免許なんてないんだよ。あすさんの実力が問題なの」
あすさん「過大評価じゃないのか……」
明海「相応だよ」
明海の母「あすさんならすぐに慣れると思いますよ」
あすさん「慣れる……」
明海「何事も最初から上手くいくはずなんてない、って、あすさん言ってたよね」
あすさん「うーむ………」
明海の母「明海、あすさんのお話をよく聞くのよ」
明海「わかってる~」
あすさん「私のお話………」
明海「センセー、今日の授業はなんですか~?」
あすさん「……あすさん先生……」

樽帝院の町は、標高2000m級の山を開拓して作られた「人工の平地」にある。
もともと険しい山と広大な森林が延々と続く大自然にあったため、
そこに生息していたクマなどの野生動物が現れるのは当然といえる。


明海「っていっても、今は真冬よ? こんな時期にクマが出てくることなんてあるの?」
執事「ここは本来の標高が2000mを超える山地でございます。それを300mまで削って作られた平地なのです。
 明海さまのお父さまが錬金術を世の中にお広めになるために、わずか1ヶ月で工事を終わらせられました。
 ですが、そのあっという間の工事によって住む場所を失った野生動物たちが無数におります。
 また気候も大幅に変わり、真冬といえども以前よりはるかに温かくなりました」
明海「じゃあ、クマが出てくることもある……」
執事「さようでございます……aspirinさまが心配でなりません……今すぐ救助に向かわれますか…」
明海「戦車部隊を」
執事「っは……」
明海「冗談よ。さっきも言ったけど、これはあすさんをテストしているの。あたしが責任を持つからいいの」
執事「…………わかりました」




あすさんはコリブ渓谷を流れる川から清水を飲んで休憩していた。

あすさん「あんな大都市があったかと思うと、少し離れたら今度は大自然が広がっている。
 全体的に不自然な地形なんだよなぁ……山のようで、山ではない……」

あすさん「真冬だけど川には魚が泳いでいるし、食べられそうな木の実もあちこちにある。
 それと……蜂の巣が無数にあるようだ……ハチに襲われたりしないだろうか……」

さすがに採集したての蜂蜜をストレートで飲むことは厳しい。
マビノギではなぜか容器に入った状態の蜂蜜を採集することができるが、
実際には手がべとべとになってしまう。

あすさん「さてと、行くかぁ」

ここで眠ったら凍死してしまう──
まだ耐えられる寒さではあるが、眠ったらさすがのあすさんもアウトである。


あすさん「おお、あの東に見えるのがタルティーンの城壁だな。ここから約2kmといったところか」

ガサガサッ…

あすさん「な、なんだ?」

あすさんの10mほど先を動く黒い影に気がついた。
タルティーンの名物、赤黒クマである。

あすさん「クマ!!??赤黒クマか!?」
赤黒クマ「……グォッ…」
あすさん「そ、そうか……たしかにここには赤黒クマがいる……」
赤黒クマ「グォーッグォーッ…」
あすさん「ええと…これはタゲられてるのか……」
赤黒クマ「グゥァァッ!」

赤黒クマはあすさんに向かって一直線に突っ込んできた。
そして目の前で急停止した。

あすさん「………これは目前カウンターというやつだな!?」
赤黒クマ「グォーッグォーッ…グァーッ」
あすさん「ならばこれを食らえ! ウィンドミ…」
赤黒クマ「グゥァァッ!」
あすさん「ぎゃ~~~~~~~~」

スマッシュだった。
軽量なあすさんの体は15mも飛ばされ、茂みの中に落ちた。

あすさん「な、なんてパワーだ……私があと10kg重かったら、地面に叩きつけられて死んでいた……」
赤黒クマ「グォーッグォーッ……」
あすさん「話の通じる相手じゃないな……」
赤黒クマ「グォーッグォーッ!!」
あすさん「これを受け取れぃ!!」
赤黒クマ「グォッ!?」

あすさんが投げたのは、女子高生からもらった蜂蜜ドリンクであった。
しかしあすさんは投げるのが下手であるため、変な方向に飛んでいった。
小中学校のハンドボール投げでもフォームが悪く、飛距離が出ないばかりか、まっすぐに投げることすらできなかったのである。

あすさん「おおおおおい!!!蜂蜜ドリンクのほうを見てくれよ!!」
赤黒クマ「グォーッグォーッ!!」
あすさん「ええい! こっちだ! こっちを見ろ!!」
赤黒クマ「…グォーッ…グァーッ」
あすさん「おまえの好きな蜂蜜だ。これでも飲んどけ!」
赤黒クマ「グゥァァッ!!」
あすさん「味わって飲めよ! 先に行かせてもらうぜ!」

♪ε= ε=ヘ( ^ω^)ノ テケテケ


あすさんは2kmを3分で完走し、タルティーンの城壁と思わしきところまで到着した。

あすさん「…はーっはーっはー……スタミナが…そう…あるわけ…じゃ…ない…から………」

ところで、1500m走の世界記録は3分26秒である。
あすさんはそれをはるかに上回る速さで2000mを走り抜けたことになる。


あすさん「…はぁ…もう…これ以上は動けない…………すまない……明海……」

…と、電話でダイイングメッセージを告げようとした瞬間、


「お疲れさま」


あすさん「……あ……」

うつぶせに倒れたあすさんが、やっとの思いで頭を持ち上げてみると、そこには少女が立っていた。

明海「タルティーンへようこそ」
あすさん「あ……明海か……」
明海「予定より2時間も遅れてるわよ」
あすさん「こ……これでも急いだほうなんだ……」
明海「……ま、今日のところは休んでいいから」
あすさん「………そうだ……これからどうする…んだっけ…ぁ……」
明海「あすさんを運んで」
執事「ささ、aspirinさま、寝台でお眠りになってください」
あすさん「…なに…その…霊柩車………」
明海「家についたらあたしの横で爆睡すればいいわ」
あすさん「……………」
執事「……aspirinさま、お察しします……どうか今日のところはお休みください……」

(^p^)たるていいーんたるていいーん(^@^)おりぐちわみぎがわです
(^p^)おにもつのおわすれもののないよう(^@^)おたしかめください

2時間半の旅を終え、ようやく目的地・樽帝院に到着した。

あすさん「ぬうああああああっ!!ついたぞ~~~! やったぞ~~~~!」

新幹線から降りたあすさんはもう疲労の限界を超えるところであった。
手ぶらで来たため荷物はなく、忘れることはなかった。


あすさん「ふー……明海に連絡を……もしも~し」
明海「もーしもーし」
あすさん「もう、ぐったり……ただいま到着しましたよっと…」
明海「お疲れ~」
あすさん「で、ここから先の行き方は……」
明海「行き方ね~」
あすさん「こんな大都市、東京の修学旅行以来だよ。右も左もわからない…」
明海「高層ビルがいっぱい見える?」
あすさん「うちの近所にはないビルディングがたくさん見える」
明海「それね、相葉コーポレーションってお父さんの会社なの、全部」
あすさん「……は?」
明海「ん?」
あすさん「あ、あいばこーぽれーしょん?」
明海「うん。あすさん、なんか違うもの想像してない?」
あすさん「ずっと俺のターン……」
明海「だと思った」
あすさん「え? じゃあこの周りの建物が全部、明海の家みたいなものなの?」
明海「そうなるね~」
あすさん「どこに行けば……どこから入ればいいんだ……」
明海「看板をよく見てみて。見覚えのある何かがあるはず」
あすさん「どれどれ……これは……千円パズル…じゃなかった、王政錬金術師のシンボルか……」
明海「そそ。うちの会社のロゴね」
あすさん「至るところにロゴが…。この都市全体が明海の会社じゃないのか??」
明海「そうそう。マビと違って近代的だよね~」
あすさん「……すげぇ……」


すでに夜になっているのに、その大都市は昼間のように明るく照らし出されていた。
夜間、暗くなりすぎて見えにくいエリンとは大違いである。


明海「今夜は特別、あすさんが来るからライトアップしてるの」
あすさん「……それはありがたい……」
明海「迷子にならないようにね」
あすさん「そ、それで、どのように進んでいけば……?」
明海「ん~……教えない。あすさんなら1時間もあればあたしのところまで来れるよ」
あすさん「い…1時間!?無理を言うなああああああああああああ」
明海「ヒントはマビに全部あるから」
あすさん「こんな未来都市のどこがマビなんだ??リニアモーターカーでも走ってるんじゃないのか?」
明海「ふふふ…頑張って来てね。じゃ!」
あすさん「ちょおおおおおおお………っっっ……切られた……」


すでに迷子である。
あすさんが方向音痴であることは古くから知られている。

団地の中を歩いて幼稚園へ行くとき、道を1本間違えただけでどこへも行けなくなるし、
大人になってからマリオカートをやったとき、コースアウトすると方向感覚を失い、
逆走したり、道ではないところを走ったりしてしまうほどである。
地図が見えていたとしても、まともに方向感覚を維持することができないのだ。


あすさん「落ち着け……こんな寒い時期に路頭に迷ったら、確実に死…………ぬ」

明るい未来都市といっても屋外まで空調が整っているはずがないため、
凍える寒さにさらされ続けるあすさんである。

月によって方位を知ることはできたが、目的地がわからないので意味がない。
自分がどこにいるのかさえ把握できないのだ。



あすさん「マビにヒントがあるって言われても……どんなふうに考えたらいいんだろう……
 ミニマップなんてないし、肉眼でクエストの位置を見ることもできないんだぞ……
 見えるのは無機質のビルの壁、地面の石畳、まぶしい街路灯くらいのものだ……
 案内図を見ても、明海の居場所など書いてないし……旅行者ガイドなんてないし……」

30分ほど同じ場所をただウロウロするだけであった。
体が冷えてくるだけで、なんらヒントを得ることはできなかった。
疲れてベンチに座ろうとするが、なぜか座れない。

あすさん「……あ……この感じは……!」

あすさんは目的地や方角といった考えを捨て、ビルの立ち並ぶ様子に注目した。

あすさん「この町並み! なぜか座れないベンチ! ここはタルティーンじゃなく、タラのエンポリウムだ!
 絶対そうだ! そうに違いない!!きっとあっちに銀行があるはず!!」

あすさんは駅から北に向かって走った。
すると、巨大なアーチをくぐり抜けた先に銀行を発見したのである。

あすさん「きたーーーーーー!!!ここを西に進めば広場だな!!」

たしかに広場があった。
広場の中央の噴水がライトアップされ、エリンのものとは比較にならないほど美しく見える。

あすさん「よし。ここを北に進めば王城だ。明海は王城にいるのか!?
 ………いや……待てよ……そもそも錬金術師の家があるのは……タルティーンだ!
 じゃあ北西に進むとコリブ渓谷があって、その先に行けばいいのか!?」



いつの間にかあすさんは疲労を忘れ、マビノギ初心者がエリンを探索するかのように走り出した。



あすさん「おお……やはり間違いない! トーナメント会場が見えてきた! ……リリスがいるのだろうか…」

トーナメント会場に立ち寄ろうとしたあすさんだが、その入り口は固く閉ざされていて入ることができなかった。

あすさん「ムーンゲートがあるかもしれない! ちょっと寄り道していこう」

タラムーンゲートらしきオブジェが置かれていたが、ワープすることはできなかった。

あすさん「ふう……いよいよ見えてきた。コリブ渓谷……!」





一方そのころ……


執事「お嬢さま」
明海「なーに?」
執事「aspirinさまのご到着が、もう1時間も遅れておられるようでございます…」
明海「あー、あすさんは迷子になってるってさ」
執事「っは…! それは大変でございます…今すぐ捜索隊を……」
明海「だーめ!」
執事「しかし………」
明海「いい? これはテストなの。あすさんの実力を証明するためのテストなの」
執事「しかし………」
明海「いいの。本当に迷子になっていたら、あたしが自分で迎えにいくから!」
執事「あの、お嬢さま……」
明海「大丈夫だって~」
執事「最近、渓谷の周辺でクマが出るとのウワサが………」
明海「え…………

運転手「親子で毎晩マビノギ三昧ですよ~」
あすさん「そうなんですか」
運転手「妻にも勧めているんですがねぇ…機械に弱くて操作もおぼつかないんですわ」
あすさん「一緒にプレイできるといいですね(棒読み)」
運転手「そうだ! 息子にもサインをお願いできますか。口から泡を吹いて喜ぶと思います」
あすさん「(うわ、キモ)」
運転手「いや~よかったよかった! あ、お急ぎのところ申し訳ありませんでした」
あすさん「ではまた」


あすさんはバスを降り、駅の自動券売機で切符を買うところであった。
しかし、自動券売機の操作は意外にもわかりにくいものである。

あすさん「あの~…樽帝院までの電車は……」
受付のおばさん「はい、いったん乗り換えて新幹線をご利用いただくことになります」
あすさん「どのように行けばいいですか?」
受付のおばさん「こちらの路線図をご覧いただくとわかりま……あら?」
あすさん「な、なにか……?」
受付のおばさん「もしかして、aspirinさん?」
あすさん「な………」
受付のおばさん「キャハハッ! 娘が話してた人と同じだわ~」
あすさん「なんてこったい……」
受付のおばさん「あっ、笑っちゃってごめんなさい。こんばんは。あたしが誰か、わかるかな?」
あすさん「いいえ、わかりません………」
受付のおばさん「あれま!」
あすさん「急いでいるので……」
受付のおばさん「んま~~! こんな時間にaspirinさん一人で大丈夫かしら?」
あすさん「大丈夫じゃないから聞いてるんです」
受付のおばさん「キャハハ、またまた冗談キツいんだからぁ~! はいっ、ここが受付です!
 案内を希望される方は、授業と修行についてのキーワードで声をかけてくださいね~」
あすさん「しゅ…修行…?」
受付のおばさん「今度ティルコに寄ることがあったらラサに聞いてみてね♪」
あすさん「そんなことより……」
受付のおばさん「はいはい、新幹線の駅までの切符がこれ。それから~」

受付のおばさんまでもがマビノギにハマっており、NPCの口調で話しているのである。
あすさんは日本の将来が心配になってしまった。


受付のおばさん「サインまでもらえちゃって嬉しいわ! それじゃ、気をつけてね!」
あすさん「いってきます…」
受付のおばさん「サーバー違うけどよろしくね~!」
あすさん「へ~い……」

あすさんが電車に乗り込んだ瞬間、

女子高生「あーっ! aspirinさんだ!!」
あすさん「うわ…」
女子高生「うちらと同じ方面だったんだ~!」
あすさん「またタゲられた……」
女子高生「タゲられたとか言わないの!!」
女子高生「aspirinさん、どこに行くの~?」
あすさん「まずは三河安城まで…」
女子高生「なんだって!?」
女子高生「うちら、そこで降りるよ~」
あすさん「(このまま一緒かよ…)」
女子高生「どこに行くのか気になる~」
女子高生「誰かに会うの~?」
あすさん「(なんて鋭い勘をしてやがるんだ……)」
女子高生「あのaspirinさんがこんな近くに…! ヤバすぎるよね~」
女子高生「保護ポーションなしでハビット 幼いタヌキが一発で成功するのと同じくらいヤバい~」
あすさん「ハハ…本当に緊張しますね」
女子高生「エンチャントマスターまだぁ? チンチン」
女子高生「まだぁ? チンチン」
あすさん「ま、まだぁ……」

まだぁ?(・∀・ )っノシ凵 ⌒☆チンチン
まだぁ?(・∀・ )っノシ凵 ⌒☆チンチン
まだぁ?(・∀・ )っノシ凵 ⌒☆チンチン

降車駅はまだだろうか……。

あすさんは内心すごく嬉しいが、女子高生のテンションについていけそうになかった。


女子高生「あ! そうだ、aspirinさん」
あすさん「な、なに……」
女子高生「aspirinさんとツーショット撮ってもいい!?」
あすさん「ギャアアアアアアアアアア」
女子高生「はいっ、チーズ! パシャリ!」
女子高生「パシャリ!」
あすさん「あわわ………」
女子高生「やったあああああああああああああああああああああああああああ」
女子高生「きたきたきたあああああああああああああああああああああああああああああああ」
あすさん「少しでも役に立てなのならあたいもうれしい……」
女子高生「んーん! 少しどころじゃないって!」
女子高生「アレクシーナなんて比較にならないよ! あんなおばさん、すっげ~丈夫そうなだけで魅力ないし!」
あすさん「あの……くれぐれも顔は見せないように……ね」
女子高生「うんうん! モザイクかけとくよ~」
女子高生「aspirinさんって言わなきゃ誰もわからないよ~」
あすさん「ちょっと待て……なぜ誰かに見せる話になっているんだ……」
女子高生「え~? なんでぇ~? aspirinさんのことすごい自慢できるんだけどな~」
女子高生「だって、あの影世界の英雄、aspirinさんが目の前にいるんだよ? 奇跡でもありえないことだよ」
あすさん「影世界の英雄なんてG9クリアすれば誰でも取れるのに……」
女子高生「いいからいいから! 今度は3人で撮るよ~」
女子高生「aspirinさん、真ん中にきて!」
あすさん「両手に墓……」
女子高生「パシャリ!!」



こうして新幹線の乗り場である三河安城駅に到着した。
女子高生たちがわざわざ案内してくれたのである。

しかし、疲労はすでに極限に達しているあすさんであった。

女子高生「aspirinさん!!またね~!」
女子高生「今度マビで会ったら絶対に声かけるから~!」
あすさん「は~い……またね~…」

ようやく解放される…。

あすさんは新幹線の指定席に座り、少し眠ることにした。


しかし眠れない。

また誰かにタゲられるかもしれないからだ。

………


誰からも声をかけられることはなかった。


べっ、別に期待してたわけじゃないんだからねっ!




のどが渇いたあすさんは、女子高生から受け取った飲みかけの蜂蜜ドリンクに気がついた。

粗雑なラベルの貼られたその小さな容器の中には、黄褐色で粘性の高い液体が半分ほど入っている。
キャップは開封され、明らかに飲まれた形跡がある…。


あすさんは恐る恐るキャップを開け、容器に口をつけた。

(*´・ω・):;*.’:;ブッ

蜂蜜ドリンクというより、蜂蜜そのものであった。

樹齢400年といわれるあすさんが引きこもりになって150年。
ずっと家にいて、光合成のために庭を歩く以外はマビノギに夢中になる毎日。
それが今、明海にそそのかされて重い腰を上げ始めたのであった。


明海「あすさんの都合のいい日はいつ?」
あすさん「今すぐでも」
明海「( ゚∀℃( `Д´)マヂデスカ!?」
あすさん「善は急げっていうだろう」
明海「急がば回れじゃないの?」
あすさん「では後日にしよう」
明海「ちょおあsだkldksldかfj;だsdj;うそうそ;;今すぐでいいの?」
あすさん「そっちに問題がなければ」
明海「( ・∀・)b OK! それじゃあ悪いけど、片道の運賃だけは用意してね!」
あすさん「これがもし冗談だとしたら、片道切符か…………」
明海「そんなこと絶対に(ヾノ・∀・`)ナイナイ」
あすさん「行くお♪ε= ε=ヘ( ^ω^)ノ テケテケ」
明海「バッチコ━━━щ(゚Д゚щ)━━━ィ」



冬の昼は短い。
あすさんが家を出ると周囲はすでに真っ暗であった。

冷え性の手をさすりながらバス停に向かう間、時計と夜空の様子をずっと気にしていた。
この見慣れた空の下へ無事に戻ってくることができるのだろうか──


バスは時間通りにやってきた。
いつものことながら、バスには誰一人として乗車していない。
運転手さえも。
といいたいところだが、この時代にはまだ全自動のバスは存在していなかった。


女子高生「でさーでさー、それが超ブサメンなんだって~」
女子高生「まじで~? ちょいググってみよっかな~」
女子高生「美人すぎる○○とか、イケメン○○とか、フッザケんじゃねー!!真面目にやれ!!って感じだけど」
女子高生「うわ、キモ。これなら早退職員のほうが100倍マシだわ」

無人のバスでどうして女子高生の話し声が聞こえるのか不思議だが、
ただあすさんが後ろのほうの座席に気づかなかっただけというのが有力な説である。

あすさん「(やれやれ……もし私が明海の言うようにイケメンだとしたら、ブサメンはこの世に存在しないだろう……)」

女子高生「んでさ~、プリクラの顔を思いっきり加工してみたわけよ」
女子高生「うっわ~キモーイ! でもキモイけど見入ってしまう~~」
女子高生「キモイもの見たさってあるよね~」
女子高生「誰得」
女子高生「きんもーーーっ」
あすさん「(そんなにキモイキモイ言わなくてもいいのに……っと…やばい…目が合った……)」

あわてて前を向いて座り直すあすさん。

女子高生「……」
女子高生「どした?」
女子高生「なんか今……」
女子高生「ん? なんか見えたの?」
女子高生「いや……ひょっとしてひょっとするとなんだけど……」
あすさん「(ひぃー……例外なくキモイキモイ言われる……)」

あすさんは走行中のバスの窓を開けて外に逃げ出したくなった。
後続の車と対向車にはねられ、体は原形をとどめぬほどに飛び散るであろう。

女子高生「(……ちょっと試してみるよ)」
女子高生「(え? なにすんの?)」
女子高生「(いいからいいから。…よし…)」

女子高生が携帯電話をあすさんのほうに向けると、


「デデーン!」

エンチャント失敗の効果音が鳴り響いた。


あすさん「この音は!!」
女子高生「プゲラゲラゲラ…」
女子高生「誰!?」
女子高生「aspirinさん、すごいです!最高です!」
女子高生「マジで?」
女子高生「あ!aspirinさん、お会いできて嬉しいです~!」
あすさん「ど、どうも……」
女子高生「なんだってえええええええ!」
あすさん「いきなり背後でデデーンって……」
女子高生「この音に反応するのはaspirinさんしかいない!」
女子高生「すげええええええええええええええ」
女子高生「aspirinさん!!サインください!!」
あすさん「いきなりクレクレですか……」
女子高生「サイン二つお願いします」
女子高生「もう制服でもカバンでも好きなところに書いちゃってください!」
あすさん「いや…それは普通にヤバい……」
女子高生「ギャハハハハハハハハハハハハ」
あすさん「じゃあ、このノートの…」
女子高生「うんうん」
あすさん「余白にでも」
女子高生「表紙に書いちゃってくださいよ~」
あすさん「そうですか、カキカキ……」
女子高生「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
あすさん「こちらにも、カキカキ……」
女子高生「きたああああああああああああああああああああああああああああああ」
あすさん「下手な文字で悪いけど…」
女子高生「おらっしゃああああああああああああああああああああああああああああああああ」
女子高生「あざーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっす!!!!!」

あすさん「驚いた……こんなところでマビノギやってる人と会うなんて……」
女子高生「こんな時間にどこへ行くんですか?」
あすさん「急用で………」
女子高生「あっ……どこか具合が悪いんですか…」
あすさん「私じゃなくて……」
女子高生「なんか道が渋滞してますね。まだだいぶかかりそう…」
あすさん「本当は急いでいるわけではないのですがね……」
女子高生「駅までですか?」
あすさん「いや、うんと遠くまで」
女子高生「ええ!!aspirinさんが自力で遠出するなんて………」
女子高生「天変地異の前触れじゃない!?」
女子高生「どうしよう………」
あすさん「あの…………」
女子高生「aspirinさん…うちらはついていけませんけど……どうかご無事で…」
女子高生「これ、ゴクッと飲んじゃって! 飲みかけの蜂蜜ドリンクだけど…」
あすさん「あ、ああ、ありがとう……」


あすさんは女子高生に励まされたが、かえって困惑した様子であった。
飲みかけの蜂蜜ドリンクに手をつけるなど……。


渋滞のため、バスは少し遅れて駅のターミナルに到着した。

女子高生「それじゃ、aspirinさん、これからも応援してます!!」
女子高生「ハァンタジーライフの更新が楽しみです!」
あすさん「応援をどうもありがとう」
女子高生「またね~!」
女子高生「おやすみなさ~い!」
あすさん「(……ブログはしばらく更新できなくなる恐れがある……)」

あすさんがバスの降り口で料金を支払った瞬間、

運転手「aspirinさん、すごいです!最高です!」
あすさん「ええぇ!?」
運転手「すみませんが、私にもサインをお願いできますでしょうか……」
あすさん「はあ……」

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